土と風と彷徨

回転するこの星のあらゆるものと遭遇し、ココロとカラダで感じたその様々を書き綴る

高円寺の魔女

魔女は叫んだ。

「私は、あんた達とたくさんセックスをしてきた。それから、あんたたちは気持ちいいって言って、それで終わりでしょう?そんなの寂しいでしょう。」

去年の夏、ぼくは東京にいた。

日暮里から電車で高円寺へ、みうらじゅんが「日本のインド」と書いた高円寺をぶらぶら散歩していた。交差する商店街に古着屋、喫茶店、多国籍料理店、怪しい水タバコ屋、が立ち並び、老若男女が交差する。

夕暮れ時、純情商店街から外れて中通り商店街に入って、通りを抜ける少し手前に床屋の赤、白、青のクルクルが見える。床屋の正面のベンチに人が座っている。一人ぼっちで何か叫んでいたけれど、まだ聞き取れない。髪が長くボサボサで、魔女みたいな女だった。周りには誰もいなかった。叫ぶ言葉がだんだんとはっきりしてきた。

「私は、あんた達とたくさんセックスをしてきた。それから、あんたたちは気持ちいいって言って、それで終わりでしょう?そんなの寂しいでしょう。」

衝撃的だった。出で立ちはそれを増幅した。チラッと振り返ったけれど、怖さを感じてほとんどの言葉は背中で聞いた。

その叫びは不思議と自分の内側の寂しさと共鳴した。声がずっと頭から離れなかった。

 

最近、藤原新也の「東京漂流」を読んでいたら、ふと記憶が浮かんだ。

路上

まぬけは、まけた。

陽の光、雨、風、飢え、渇き、孤独、鬱、言葉、嘘、永くて硬いアスファルトの地面、やわらかい心、あたたかい手、やさしい味のおにぎり、バザールの商売人、おんぼろバス、青空、寄生虫、見えるものすべての幻に。

まぬけは、まけた。そして、ほんのちょっとだけゆるした。

じぶんが消えていく、じぶんが透明になっていく

路上にて、また君と会おう。

再见

アップトゥーユー!

人生は劇場みたいだとふと思う、この世に「ポンッ」と飛び出したら人生劇場の幕は上がる。誰も彼もがメインキャラクターで、そいつはとてもユニークな存在。宇宙という拡がり続ける無限のセッティングに星の動きで変わってゆく場面転換、そこに一瞬たりとも同じ局面は無し。ほら、だんだん面白くなってきた?でもね、ピッカピカのライトに照らされることも、暗闇に沈むこともある。ハッピーな局面も、バッドな局面もあるからそこに深みが生まれるのだと思う。つまりは、今という一瞬をもっと楽しめということ。

新しいことを始めようか、何かをクリエイトしたいんだ。移住生活に区切りをつけて思い当たる土地に飛び込んでみたい、もっと世間の深みに潜っていきたいんだ。天然痘で人々が倒れ、飢え苦しみ、地震が起き、すべてが狂った時代に大仏様は作られたらしい、大仏様が居る土地へダイブ!今というタイミングだと思うのだ。

世界は、心を映す鏡だ。あなた次第では、どこへでも

君のタマシイの叫びが聞きたい

誰からも拒絶され、自分からもヒトを拒絶し、固く閉ざされた扉はちっとも動かないままで、この星の切なさと孤独を眺め続けたその目には、ボンヤリと青い空が映る。

ヒトは熱かった。世界は眩しい光の中にあった。

暖かいところへ行こう、君とは何千回も何万回も会っているのだから、たくさんのコトバは必要じゃない。カラダに終わりはあっても、廻り続けるタマシイに終わりはないって知ったらなんだか熱くなってきた。今を楽しめたら万事快調。

君のタマシイの叫びが聞きたいんだ。僕はみんなを愛したいんだ。

島クルージング

出会うコト、出会うヒト、まわりがみんなビューティフルになってきた。世界はちっとも変わらないはずなのにアタマにチャンネルがあるのだとすれば、ガチャッって変わったように感じるね?

鹿児島の南、種子島にやってきた。WWOOFとしてこの土地の土着芋、安納芋を育てる農園に、ボブマーリーが聴こえてくる農園で、そのレゲエのリズムで芋を掘ったり、選別をしたりしていた。サーファーが多いこの島で出会う人はサーファーばかり、島一周がサーフポイントみたいで素晴らしい波が立つらしい、農園のボスもサーファーで、男は言った「波は、海と風の芸術だよ。」“ガイアシンフォニー”って村上龍のドキュメンタリームービーでそういうタイトルがあった。海岸で目を閉じるだけで地球の交響曲が聴こえてくるようだった。それは、波の音、風の音、夜の星空。そして晴れ、時々頭のバルブがブッ飛んでいるようだった。

ある日、定置網の漁船に乗った。漁は朝の6時から始まる。本船と小舟の2隻で網を絞っていく、夜が明ける前の瞬間はは一日のうちで最高に気持ちのいい時なんだと思う。それはマジックアワー、島は良かった。鯖の刺身が美味いとか、そんなことはどうでもよく思えるほど良かった。人生は魂の実験みたい。

種子島とはサヨナラして屋久島へ

WWOOFINGへ

旅客機で千歳から関空でトランジットして那覇に着く、キビ狩り、製糖工場のバイトを探しに来た。キビの仕事が終わるとタバコの葉の収穫の時期で仕事があるようで、そうやって労働トリップをしてる人は多い、まとまった資金ができると日本を飛び出したりするのだろう。温度がぬるい、そして風が強く太陽が高い位置でギラギラしてる。離陸する戦闘機、そして空気が爆発するような音、冬に沖縄に来る奴は変人が多いと男から聞いた。

ある日の夜、ゲストハウスで「サッカー観よう!」って男に連れられ入ったレゲエバー、島酒を飲みながら(沖縄の人は泡盛のことを島とか島酒と呼ぶ)ちっちゃいテレビで日本とオランダの試合を観る。引き分けのサッカーは終わり、暫くしてバーに入ってきた女の人が言った「君、14日の関空からジェットスターに乗って来たでしょ?」だって、僕の髪のモシャモシャが印象的で、ラスタか、ヒッピーか?ナチュラルそうな僕が人間としてどこのポジションにいるのか後ろの席から見てずっと考えていたらしいのだ、大阪人39歳の彼女の名前は分からないまま「にーちゃん、また会うやろ?」って、ずっと考えていた答えが分かって良かったですね。

キビの仕事探しはとりあえず置いておいて、WWOOFに行くことにした。鹿児島県種子島、オーガニック芋農家へ、WWOOFとは、お金のやりとりなしで、「食事・宿泊場所」と「力」そして「知識・経験」を交換するしくみ